念願(だったのかもしれない)ホームページが公開される
南区の小さな理容院で起きた、静かな大事件、先週のこと。私は約2か月ぶりに、南区のあの理容院へ向かった。髪は伸び放題、サイドは江戸時代の散切り頭のように跳ね上がり、これはもう店主に任せるしかない、という状態だった。
ホームページを作ってあげたい
店のドアを開けると、いつものように店主が鋭い目つきでこちらを見た。
「おう、伸びとるのう」
その声を聞くと、なぜか安心する。
そして、前回のあの決意、カットが始まると、私はふと思い出した。
「この店のために何かできないか」
と考えたのだった。
とはいえ、私にできることといえば、
ホームページを作るか、ブログで紹介することくらい。
店主に聞いたら、
「ホームページ?ないよ」
とあっさり言われた。
そこで、私は勇気を出して聞いた。
「ホームページ、作ってもいいですか?」
店主はタオルを肩にかけたまま、
まるで天気の話でもするように言った。
「ええよ、ええよ。好きにしたらええ」
その軽さに、逆に責任を感じた。
写真が問題
ただひとつ、問題があった。
前にも書いたが、店の中が散らかっている。
いや、散らかっているといってはいけない。
生活感が爆発しているといったほうが近い。
ヨレヨレタオル、物置化した椅子、
店主の夕食会場でもある待合椅子。
これを写真に撮ってホームページに載せるのは……?
どう考えても、どこからかひっぱってきた、嘘っぽいけど、見栄えのあるイメージ写真のほうがマシだ。
しかし、イメージ写真にしてたら、
この店の良さが消えてしまう。
悩んだ末に、ホームページというよりも、文章中心のブログで紹介することにした。
それ以来、気づけば2か月もたってしまっていた。
ご対面
カットが終わり、私はスマホを取り出した。
「店主さん、ホームページつくりました」
店主はガラケーしか持っていない。
スマホの画面を見せると、
目を細めて画面をのぞき込んだ。
「ほう」
「どうですか?」
「ええよ、ええよ」
それしか言わない。
喜んでいるのか、
残念に思っているのか、
まったく読み取れない。
でも、たぶん?
いや、きっと喜んでくれているはずだ。
ついでにマップへの登録の話をしてみた
さらに、私は思い切って聞いた。
「店主さん、Googleマップに登録してもいいですか?」
店主はハサミを片付けながら言った。
「ええよ、ええよ。好きにしんさい」
その言い方は、
まるで「そこらへんの草むしっといて」くらいの軽さだった。
でも、その軽さがありがたい。
帰り際、店主がぽつりと言った
会計を済ませて帰ろうとしたとき、
店主がふとつぶやいた。
「わしはガラケーじゃけえ、ようわからんけどの。
あんたがやってくれるんなら、ええもんができるじゃろ」
その言葉に、
私はありがたく受け取ってもらえたことに気づいた。
そして、店主は今回も言う
「好きにしたらええ」
その言葉は、
無関心ではなく、
信頼の裏返しなのだと、
私はようやく気づいたのだった。
南区の小さな理容院には、
今日もそんなゆるくて深い信頼関係が静かに積み重なっている。



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