南区の小さな理容院で出会った、こわもて店主の超ウルトラ短髪物語

広島市南区の住宅街を歩いていると、ふと視界に入る小さな理容院。看板は年季が入り、玄関先には「カット 1500円」の文字が昭和の風をまとって揺れている。私はその日、髪が明治維新の散切り頭のように伸びきってしまい、ついに覚悟を決めて扉を開けたのでした(このお話しはフィクションで、登場する場所・人物ともに関係はありません ^^)。

大柄で、目つきの鋭い店主

中に入ると、まず目に飛び込んできたのは――大柄で、目つきの鋭い店主。

年齢は71歳。バブル期に理容院を始め、途中で黄金山のお墓のあっせんまで手伝っていたという、なんとも多才な人生を歩んできた人だ。

しかし、その外見はどう見ても強面。

初見の私は「ここで本当に髪を切ってもらって大丈夫なのだろうか」と、心の中で小さく震えていた。

ごちゃごちゃした店内とヨレヨレタオルの歓迎

店内は、昭和の時間がそのまま閉じ込められたような空間だった。

干したばかりのヨレヨレタオルが椅子に無造作に置かれ、鏡の前には2つ並んだ椅子のうち、奥側は完全に物置と化している。

入口近くには待つための椅子があるが、そこは店主の夕食スペースらしく、味噌汁の香りがほんのり漂っていた。

「これは味がある、というやつだな」と、自分に言い聞かせる。

こわもて店主まさかの人懐っこさ

店主は鋭い目つきのまま、

「どうしましょうか」

と、低い声で聞いてきた。

私は散切り頭を指しながら、

「短めでお願いします」

と答える。

すると店主は、

「短いのはわかった。長くはできんからの」

と、昭和の職人らしいツッコミを返してきた。

この瞬間、私は気づいた。

この人、見た目は怖いけど、めちゃくちゃ人懐っこい。

夏だったこともあり、店主は迷いなくバリカンを手に取り、超ウルトラ短髪へと一直線。

散切り頭は、あっという間に爽やかな夏仕様へと変貌した。

昭和の値段と昭和のジョーク

さて、問題はお代である。

玄関に「1500円」と書いてあるが、あの昭和の雰囲気からすると、実は裏メニューで5000円とか言われるのではと、内心ドキドキしていた。

恐る恐る

「おいくらですか」

と聞くと、店主は真顔で、

「千五百万円です」

と返してきた。

昭和のジョークが、令和の私に突き刺さる。

私は2千円を差し出し、店主は「ちょっと待ってて」と言い残して外へ。

数分後、目の前のコインランドリーで両替してきた500円玉を手に戻ってきた。

なんという誠実さ。

なんという昭和の優しさ。

そして私は常連になった

初めて訪れたその日から、私はこの理容院のファンになった。

強面なのに人懐っこい店主。

ごちゃごちゃしているのに、なぜか落ち着く店内。

そして、1500万円のジョーク。

まだ通い始めて1年ほどだが、行くたびに小さなドラマが生まれる。

南区の片隅で、今日も店主は鋭い目つきで、しかしどこか優しい手つきで、誰かの髪を整えているのだろう。

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