店主、迷子を預かる:南区の小さな理容院で起きた、忘れられない一日

ある日の午後。南区の理容院は、いつものようにゆったりとした時間が流れていた。店主はヨレヨレタオルを椅子に置き、「今日は静かじゃのう」とつぶやきながら、鏡を拭いていた。そのとき、

店主、迷子を預かる

店のドアが、勢いよく開いた。

「こんにちはー!」

小さな声が響いた。

店主が振り返ると、

そこには5歳くらいの男の子が立っていた。

「おじちゃん、ここどこ?」

男の子は店主を見上げて言った。

「おじちゃん、ここどこ?」

店主は思わず笑ってしまった。

「ここは理容院じゃ。兄ちゃん、誰と来たんじゃ」

男の子は首をかしげた。

「わかんない。気づいたらひとりだった」

店主は眉をひそめた。

(これは迷子じゃな)

店主、まさかの保育モードに突入

店主は椅子を指して言った。

「ほんなら、ちょっと座りんさい。

お母さんかお父さんが探しとるかもしれんけえ」

男の子は素直に座り、店内をキョロキョロ見回した。

「ここ、なんかいい匂いするね」

店主は照れくさそうに言った。

「そりゃあ、シャンプーの匂いじゃ」

男の子はさらに言った。

「おじちゃん、こわい顔してるけど、いい人だね」

店主は苦笑いした。

「兄ちゃん、それは褒めとるんかの」

突然のカット要求

しばらくすると男の子が言った。

「ねえ、おじちゃん。

ぼく、髪切ってみたい!」

店主は驚いた。

「兄ちゃん、迷子の間に髪切るんか」

男の子は真剣な顔でうなずいた。

「うん。だって、かっこよくなってお母さんに会いたいもん」

店主は胸がじんわり温かくなった。

「ほんならちょっとだけ切っちゃるか

(ほんとは、勝手に切るわけにいかんがの)」

店主、人生で一番慎重なカットをする

店主は子ども用のタオルを首に巻き、

バリカンではなくハサミを手に取った。

(子どもの髪は難しいけえの

しかも迷子じゃし、責任重大じゃ)

チョキチョキ

店主は普段の3倍慎重にハサミを動かした。

(実際には、ちっとも切っていなかった)

男の子は鏡を見ながらニコニコしている。

「おじちゃん、すごいね!

ぼく、ヒーローみたい!」

店主は照れくさく笑った。

そこへ、店の外から声が聞こえる

「まもるー!どこ行ったのー!」

女性の声だ。

男の子はハッとした。

「お母さんだ!」

店主が外に出ると、

心配そうな母親が走ってきた。

「すみません!ほんとにすみません!

ちょっと目を離したらいなくなって!」

店主は落ち着いた声で言った。

「大丈夫じゃ。ここにおったで」

男の子は母親に抱きつきながら言った。

「お母さん!見て!

おじちゃんがかっこよくしてくれた!」

母親は店主の顔を見て、深々と頭を下げた。

「本当にありがとうございました」

店主は照れ隠しのように言った。

「ほんなら1500万円

といいたいところじゃが

迷子からはお金とれん」

母親は一瞬固まったが、

すぐに笑って「1500円なんですね」と返した。

「身代金かと思いましたわ」

そして店主は今も言う

「あの兄ちゃん、迷子のくせに堂々としとったわい。

髪切ったら、もっと堂々としとったけどの」

南区の小さな理容院には、

今日もそんなちょっとした奇跡みたいな物語が静かに積み重なっている。

コメント