店主、店を間違えられる:南区の小さな理容院で起きた珍客騒動
ある日の昼下がり。店主はいつものように、干したばかりのヨレヨレタオルを椅子に置き、「今日は静かじゃのう」とつぶやきながら、のんびり新聞を読んでいた。そのとき店のドアが勢いよく開いた。「すみませーん!予約してた春日です!」店主は新聞を下ろし、鋭い目つきで男を見た。
明らかに美容室に来た人の雰囲気
入ってきたのは、髪をふわっとセットした若い男性。
手にはスマホ、肩にはブランドバッグ。
どう見ても「美容室に来た人」である。
店主は静かに言った。
「兄ちゃん、ここは美容室じゃないで。理容院じゃ」
しかし男性はキョロキョロと店内を見回し、
「えっあれ?でも地図ではここって」
と混乱している。
店主は思った。
(地図が間違えとるんか、兄ちゃんが間違えとるんか
どっちにしても、うちじゃないわい)
しかし、男性は勘違いを続ける
男性は鏡の前に立ち、
「なんか思ったよりレトロな美容室ですね」
とつぶやいた。
店主は心の中で叫んだ。
(レトロじゃなくて昭和じゃ!
しかも美容室じゃなくて理容院じゃ!)
しかし店主は冷静に言った。
「兄ちゃん、ほんまに間違えとるで。
美容室はこの道をまっすぐ行って、右に曲がったとこじゃ」
男性はようやく気づいたようで、
「あっすみません!本当にすみません!」
と慌てて頭を下げた。
ここで店主の昭和ジョークが炸裂
男性が帰ろうとしたその瞬間、店主は言った。
「ほんなら、せっかく来たんじゃけえ
1500万円だけ置いていきんさい」
男性は固まった。
店主はニヤリ。
「冗談じゃ。1500円もいらんわい」
男性はホッとした顔で笑い、
「びっくりしました!」
と言って店を出ていった。
しかし、事件はここで終わらなかった
数分後
またドアが開いた。
さっきの男性が戻ってきたのだ。
「店主さん!
あのやっぱりここで切ってもらってもいいですか?」
店主は驚いた。
「兄ちゃん、美容室じゃなくてええんか」
男性は照れくさそうに言った。
「さっきのジョークで、なんか安心してしまって
初めての店って緊張するんですけど、
ここなら大丈夫かなって」
店主は照れ隠しのように言った。
「ほんなら座りんさい。
美容室みたいにはできんけど、男前にはしとくけえ」
仕上がりは昭和の爽やか青年
店主は丁寧に、慎重に、しかし大胆にハサミを動かした。
仕上がったのは
美容室とは違う、昭和の爽やかさが漂う髪型。
男性は鏡を見て笑った。
「なんか新鮮です。
間違えてよかったかもしれません」
店主は胸を張った。
「ほんなら今度こそ1500万円じゃ」
男性は笑いながら1500円を置いて帰っていった。
そして店主は今も言う
「あの兄ちゃん、最初は間違えて入ってきたのに、
結局その後も何回か来よったわい。
間違いも悪いことばかりじゃないの」
南区の小さな理容院には、
今日もそんな偶然から始まる物語が静かに積み重なっている。



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