店主、人生唯一のクレーム事件:南区の理容院で起きた、涙と笑いの大騒動
店主が理容院を開いて十数年が経った頃。常連さんも増え、店主の昭和ジョークも板につき、店はすっかり地域の憩いの場になっていた。そんなある日、店主は人生でただ一度だけの大クレームを受けることになる。(このお話しはフィクションで、登場する場所・人物ともに関係はありません ^^)
事件の発端は、ある中年男性の来店だった
その日やってきたのは、見た目はごく普通の中年男性。
しかし、どこか落ち着かず、ソワソワしている。
「今日は大事な会議があるんです。
きっちりした髪型にしてください」
店主は鋭い目つきでうなずき、
「任せんさい」
と椅子に案内した。
男性は緊張しているのか、ずっと鏡を見つめている。
店主は丁寧に、慎重に、しかしいつものペースでハサミを動かした。
仕上がりは完璧のはずだった
カットが終わり、男性は鏡を見て満足そうにうなずいた。
「いいですね。これなら会議も大丈夫です」
店主も胸を張った。
「ほんなら1500万円です」
男性は一瞬固まったが、すぐに店主のジョークだと気づき、
「ははは、1500円ですね」
と笑って帰っていった。
ここまでは、いつもの平和な理容院の風景だった。
しかし30分後、店のドアが勢いよく開く
バンッ!
さっきの男性が戻ってきた。
顔は真っ赤、息は荒い。
「店主さん!大変なことになりました!」
店主は驚いた。
「どうしたんじゃ」
男性は震える声で言った。
「会議に行ったら
部長にお前、なんでそんなに若返っとるんじゃって怒られたんです!」
店主は思わず吹き出しそうになったが、必死にこらえた。
「若返ったんはええことじゃろ?」
しかし男性は続けた。
「部長はお前は反省が足りん!もっと疲れた顔で来い!って
結局、会議に出してもらえませんでした!」
店主は心の中で思った。
(そんな理不尽あるかい)
そしてついに、人生唯一のクレームが飛び出す
男性は涙目で叫んだ。
「店主さん!
あなたの腕が良すぎて怒られたんです!
どうしてくれるんですか!」
店主は困り果てた。
「兄ちゃんそれはわしのせいなんかの?」
男性はしばらく黙った後、
「いや違いますね」
と肩を落とした。
店主はそっと言った。
「ほんなら、次からは疲れとる風カットにしとくけえ」
男性は吹き出し、
「そんなカットあるんですか」
と笑った。
こうしてクレームは、笑い話に変わった。
その後、男性は常連になった
男性はその後も店に通い続け、
「今日は若返りで」
「今日は疲れ気味で」
と、店主に注文の雰囲気を伝えるようになった。
店主は今でも言う。
「わしが怒られたのは、あの一回だけじゃの。
腕が良すぎて怒られるんも、悪くないけどの」
南区の小さな理容院には、今日も物語が生まれている
店主の鋭い目つきと人懐っこい笑顔は、
今日も誰かの髪と心を整えている。
そして、あの唯一のクレーム事件は、
今では店主の鉄板ネタとして語り継がれている。



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