黄金山でお墓あっせん騒動記―理容院の店主が巻き込まれた、ちょっと不思議な夏の日―

理容院の店主が、かつて黄金山のお墓のあっせんを手伝っていた。そんな話を聞いたのは、私が常連になって数回目のことだった。「昔はのう、ちょっと頼まれて墓の場所を紹介しとったんよ」と、店主はバリカンを動かしながら、まるで天気の話でもするかのように言った。(このお話しはフィクションで、登場する場所・人物ともに関係はありません ^^)

理容院の店主が巻き込まれたちょっと不思議な夏の日

黄金山といえば、広島市民の間でいろんな噂が飛び交う山として知られている。

「昔は怖い人たちが住んどったらしい」とか、「夜に行くと誰かに見られとる気がする」とか、半分怪談のような話が混ざっている場所だ。

そんな山でお墓の案内をしていた店主。

どう考えても、ただの理容師の副業としてはスケールが大きすぎる。

ある夏の日、店主は謎の依頼人に呼び出された。

「ある日な、でっかい車が店の前に止まってのう」

と店主は語り始めた。

その車から降りてきたのは、黒いサングラスに黒いスーツの男。

まるで映画のワンシーンのようだ。

「お墓の場所、案内してほしいんじゃが」

と、低い声で言われたらしい。

店主は目つきこそ鋭いが、心は人懐っこい。

頼まれたら断れないタイプだ。

「まあ、ええですよ」

と軽く引き受けてしまった。

黄金山の山道で起きた奇妙な沈黙

車に乗せられ、黄金山へ向かう店主。

車内は静まり返り、聞こえるのはエンジン音だけ。

店主は気まずさに耐えられず、

「今日はええ天気ですのう」

と話しかけた。

しかし返事はない。

「・・・」

「・・・」

沈黙が山道のカーブに沿って伸びていく。

店主は後にこう語った。

「わし、あの時が人生で一番しゃべりづらかったわい」

墓地に着くと、依頼人は突然

ようやく墓地に到着すると、依頼人は急に柔らかい声で言った。

「ありがとう。助かったよ」

そして、店主に封筒を差し出した。

店主は慌てて手を振った。

「いやいや、わしは案内しただけじゃけえ、こんなもん受け取れん!」

すると依頼人は、

「いや、これは気持ちだから」

と押し返してくる。

店主は困り果て、最終的にこう言った。

「ほんなら散髪に来てください。1500円で切りますけえ」

依頼人は一瞬きょとんとした後、

「考えとく」

と笑って帰っていった。

そして店主は悟った

その日の帰り道、店主は思ったらしい。

「わし、やっぱり墓より髪のほうがええわい」

それ以来、店主はお墓のあっせんをほとんどやめ、

理容院一本で生きていくことを決めたという。

今も店主は、鋭い目つきでハサミを動かしながら言う

「墓は静かでええけど、やっぱり人の頭を切っとるほうが楽しいのう」

その言葉に、私は毎回ちょっと笑ってしまう。

黄金山の噂も、黒スーツの依頼人も、全部まとめて店主の人生のスパイスだ。

そして今日も、南区の小さな理容院では、

店主の鋭い目つきと人懐っこい笑顔が、誰かの髪を整えている。

コメント