店主、まさかの誕生日サプライズ:南区の小さな理容院で起きた、奇跡みたいな一日

店主がまだ70代に入ったばかりの頃。その日は、いつもと変わらない静かな朝だった。ヨレヨレタオルを椅子に置き、「今日もぼちぼちやるかのう」とつぶやきながら店を開けた。店主は誕生日を特別に祝うタイプではない。むしろ、誰にも言わずに静かに過ごしたい派だ。しかし、その日は店主の想像をはるかに超える一日になる。(このお話しはフィクションで、登場する場所・人物ともに関係はありません ^^)

午前中、妙に客が多い

開店してすぐ、常連のおじいさんが来た。

「店主さん、今日はえらい元気そうじゃのう」

店主は首をかしげた。

「いつも通りじゃが」

おじいさんはニヤニヤしている。

続いて、近所のおばちゃんが来た。

「店主さん、今日はなんか顔が明るいねえ」

店主はますます不思議に思った。

(なんじゃ、今日は褒められる日なんか?)

しかし、誰も理由を言わない。

午後、店主が気づく

午後になり、常連の青年が来た。

「店主さん、今日って特別な日ですよね?」

店主はハサミを止めた。

「なんのことじゃ」

青年は笑ってごまかした。

「まあ、あとでのお楽しみです」

店主はますます混乱した。

(なんなんじゃ今日は)

夕方、ついにその時が来る

夕方、店主が店を片付けようとしていたとき。

ドアが開いた。

そこには、常連たちが勢ぞろいしていた。

おじいさん、おばちゃん、青年、子ども連れの家族まで。

店主は驚いて固まった。

「なんじゃ、なんじゃ?」

すると、みんなが声をそろえて言った。

「店主さん、誕生日おめでとう!」

店主は目を丸くした。

「なんで知っとるんじゃ!」

おばちゃんが胸を張って言った。

「そりゃあ、長年通っとるんじゃけえ。

誕生日くらい覚えとるよ」

そして、

まさかのケーキ登場

青年が箱を開けると、

中には小さなケーキが入っていた。

ケーキの上には、

「店主さんいつもありがとう」

とチョコレートで書かれている。

店主は照れくさそうに言った。

「わし、こんなん似合わんで」

すると子どもが言った。

「店主さん、ろうそくふいて!」

店主は観念して、

小さなろうそくをふっと吹き消した。

拍手が起きた。

そして、店主の昭和ジョークが炸裂

店主は照れ隠しに言った。

「ほんならケーキ代は1500万円じゃ」

常連たちは大笑いした。

「はいはい、1500円ね!」

「いや、ケーキ代はこっちが払っとるわ!」

「店主さん、今日はタダで切ってくれんの?」

店主は笑いながら言った。

「誕生日でも値段は変わらんわい」

その夜、店主はひとりつぶやいた

みんなが帰ったあと、

店主は椅子に座り、静かに店内を見渡した。

「わしええ客に恵まれとるのう」

その声は、どこか誇らしげで、

少しだけ震えていた。

そして今も店主は言う、

「あの日だけは、ほんまに嬉しかったわい。

誕生日を店で祝われるなんて、人生で一回だけじゃ」

南区の小さな理容院には、

今日もそんな人の温かさがあふれる物語が静かに積み重なっている。

コメント